夕方、帰宅途中に乗った電車の車内で、ある女の横に座った。
細身の若い女で、黒い薄手のコートを着ていた。
車内はそこそこ混み、立っている人もあるというのに、
どこで買ったか知らぬが、紙袋を横の座席に置き、足を組んで座っていた。
髪や服装など身なりはきちんと整えてはいるが、
如何に身を綺麗に飾り立てようと、意味はあるまい。
いくら飾り立てようと、自らのさもしい心根は隠せまい。
と、そんなことを考えているうちに電車はホームに着いた。
電車を降り、階段を駆け下り、駅を出た。
ふと、空を見上げる。
青白く光った三日月があまりに美しい。
In the tranquil landscape, man beholds somewhat as beautiful as his own nature.
という一節が頭に浮かんだ。

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